ギンナンの発芽
2012年 06月 03日
昨日、切手の博物館で開催されている『かわいいキノコ・キノコの魔法』展を見に行ったのですが、目白駅までの帰り道、何か生えていないかと植え込みに視線を這わせながら歩いていると、何やら白っぽく丸い物体の点々と転がっているのが入りました。
目がきのこ探索の態勢に入っていたので、最初はきのこの姿を期待したのですが、近づいてよく見るとギンナンから芽が出ています。 普通ならここで興味の冷めるところですが、お恥ずかしいことに、私はギンナンからイチョウの発芽しているところを見たことがなく、かえって興味をそそられてしまいました。
まだ都会化が進んでいない頃の多摩地区で育ったため、ギンナン自体は珍しいものではなかったのですが、イチョウの場合、秋になって実が落ちてもすぐに誰かがごっそり拾っていくことと、育って巨木になっては困るゆえにこぼれ種を掃除してしまうためか、発芽している姿はまったく記憶に残っていないのです。 そのため、若いイチョウの姿で思い描くことができるのは、ひこばえしかありません。
そのようなわけで、しげしげと観察していたわけですが、細かく見て行くと、この芽ではギンナンの殻の中に葉なのか茎なのかわかりませんが、まだ何かがもぐり込んでいます。 バジルなどでもよく種の殻から子葉を引き抜くことのできないまま成長してしまう場合があるので、そのような感じかと思ったのですが、あとで調べてみるとそうではなく、種から出ているのはそのまま根となって土に潜り、そののち種の殻のすぐ外のところから芽が分かれて出ているようです。
よくよく考えれば、殻の中には食べ過ぎると吹き出物ができるほど栄養たっぷりの、いわゆるギンナンがあるのですから、いわばサケの稚魚がお腹にまだイクラを抱えているような感じで、根や芽を成長させるための栄養分を供給しているのでしょう。
ところでこのイチョウ、とある店舗の前の植え込みなので、このまま育って十メートル以上になってしまうと大変なことになるのでしょうが、おそらくその前に引っこ抜かれてしまうでしょう。 そもそもこの場所では大きく育つことことすらできないかもしれませんが、なんとなく健気なものを感じて可愛らしくも思えました。