クロマグロの突進
2008年 07月 20日
葛西臨海水族園の続きです。
この水族館の展示の目玉が大型回遊魚の水槽です。円周形の水槽を何十匹もの巨大なクロマグロや、カツオが悠々と泳いでいるのですが、この日は少々様子が違っていました。
マグロが悠々というより、かなりの速さでびゅんびゅんと目まぐるしく泳ぎ回り、しばしば水槽の一角で二匹のマグロが喧嘩でもするように突然追いかけっこを始めるという光景を目にしました。巨大なマグロが猛烈な速さで水槽の中を突進するさまは、銀色で紡錘形の体ということもあり、魚より弾丸といった感じで、もの凄い迫力です。その都度、自分も含めて水槽の周囲の観客から、一斉に「おおっ」という興奮めいたどよめきが起きていました。
飼育員さんの説明では、もうじき餌の時間になることと、ちょうど今が繁殖期に当たっていることが重なってこのような状態になっているとのことでした。言われて初めて気付いたのですが、一部のマグロの体にはこの時期だけに見られるという、うっすらとした縦縞が浮かび上がっていました。
餌の時間になると興奮して産卵が始まるかもしれないということなので、その時間に戻って来て待ち構えていると、水槽の上から餌が投入された途端、マグロたちが狂ったようにめちゃくちゃな方向に泳ぎだし、それと同時に水槽のあちこちで煙が吹き出すように白濁し始めました。マグロたちが餌そっちのけで一斉に産卵と放精をはじめてしまったのです。
暫くすると興奮も治まってマグロたちは餌を食べ始め、白濁した水も浄化装置の作用で澄んできました。飼育員さんの話では、目を凝らすと直径一ミリ程度の透明な卵が見えるとのことで、よく探してみると、何となく透明な丸いものが漂っているようにも見えます。それが本当に卵なのかは確信が持てませんが、どのみちそのような感じのものなのでしょう。
マグロの産卵風景を見たのは初めてでしたが、サケとイクラの比率から想像すれば、マグロの卵など直径一センチくらいあってもよさそうな気がするだけに、この大きさは意外でした。
私はと言えば、あまりの迫力につられ、動きものの撮影はただでさえ大の苦手だというのに、ついつい夢中になって流し取りでマグロの姿を納めようとしましたが、あまりの速さと大きさで、頭を画面の隅っこに捉えるのが関の山でした。